【イベントレポート】ベンチャー企業における弁護士活用の実際と課題

大阪に生まれる起業のエコシステム。弁護士と何ができるか?

2017年9月14日、大阪イノベーションハブ(大阪市)が大阪弁護士会(会員弁護士4,456名)とのイベントで、株式会社サンブリッジ グローバルベンチャーズ代表取締役社長兼会長のアレン・マイナー(サンブリッジ グループCEO)も登壇しました。テーマは、「ベンチャー企業における弁護士活用の実際と課題」です。当日は、起業支援に興味を持つ多くの弁護士先生が参加され、熱気あふれる会となりました。

イベントの企画と司会を務める、森理俊氏(アクシス国際法律事務所 弁護士)。

東京で起業支援を多数経験し、大阪にUターンしてからは、法曹界を巻き込んだ起業のエコシステム構築に尽力している。

大阪ならではの、新しい仕組みが生まれる可能性は

アレン・マイナー:今日ここに来て驚いたのは、多くの席があることです。それほどたくさんの弁護士さんがベンチャーの勉強会に参加されるとは思っていませんでした。
自分は日本でお世話になったので、日本に還元したいという気持ちがあります。シリコンバレーと日本の良いところを取り入れて、新しいモデルを作りたいと思っています。
東京のベンチャー企業の中には、上場し、海外展開をし、成功した起業経験者が投資に回り、何度も起業する人も出てきました。でも、ここではまだ十分ではなく、当社は今年7月に、東京から大阪へ本社を移すことにしました。起業家を生み育てる環境を大阪で作っていきたいと考えています。

サンブリッジ グローバルベンチャーズ 代表取締役アレン・マイナー

(起業家であり、投資家でもあり、日米の起業環境に詳しい)

アメリカと日本、弁護士とベンチャー企業との、かかわりの違いは何でしょうか。日本の弁護士は、法律の解釈者として付き合うことが多い気がします。契約の解釈、裁判所とのやりとりなど、正しく導くという点に重きを置かれます。アメリカでは、ベンチャーキャピタル(VC)とどう交渉するかが重要です。弁護士も、「あなたくらいの規模の企業を5-6社担当しています。それと比較すると時価総額はもっと要求できるでしょう。」と、アドバイスします。大阪弁護士会としても、関西で資金調達するベンチャーがあれば、この中で誰かが知っているでしょうから、機密保持を守りつつ情報交換すると良いでしょう。

当社は、人口一人当たり1万円のベンチャー投資が回る環境作りを目指して頑張っています。大阪だと、だいたい200億円くらいになります。現状では一人当たり2,000円なので、あと5倍増やさねばなりません。ちなみにシリコンバレーは、一人25万円です。目標の1万円はロスアンジェルス並み、ソウルも最近そんな感じです。大阪は、産官学の規模も大きく、200億円の投資環境は不可能ではありません。期待をしています。

法曹のプロに望む、ベンチャー支援とは

その後、ものづくり支援ベンチャーのMakers Boot Camp 代表である牧野成将氏、大阪市経済戦略局の吉川正晃氏を加え、弁護士の関与の重要さについて語りました。

牧野:ベンチャー企業は、問題が起こってから弁護士に相談することが多いようです。しかし、ものづくりでは特に、知財を含め、法律の確認が必要です。初期段階から、弁護士にチームに入ってもらうことができれば、早期問題発見になるのではと思います。

吉川:大阪の経済成長戦略の中で、2020年までにGDPの成長率を年平均2%伸ばし、年間1万人の雇用を創出する目標があります。そのためには、大阪市が中継都市となることが重要です。シンガポールが例にあげられますが、その町自体がネットワークインフラになることです。大阪には川があり、湾があります。交通の要衝、世界の玄関、ハブです。OIHの価値観は、オープン、フラットコミュニケーション、フレンドリーであり、おもろい文化の追求です。計算してやろうではなく。二番目の東京になってはいけないと、私たちは思っています。

牧野:弁護士への基本的な相談は、ファイナンス、ビジネス(ビジネススキーム・契約スキーム)、コーポレート(会社の適切な運営)、知財戦略、労務管理、紛争解決・紛争予防などでしょう。また、資本政策を作るうえで、株価や株の比率、株式の種類などもアドバイスを受けたいと思います。ある企業が、個人投資家から「1,500万円出すので49%株を欲しい」といわれ、断ったそうです。出す側も、悪気なくしていることもあるようですが。

アレン:シリコンバレーでは、資本政策表のようなものは存在しません。予測は不可能です。今の状況を理解し、次のステップに必要な体制は何か、それを2年間維持するために必要な現金はいくらかと考え、資金調達をします。2年間は資金調達をせず、業務に集中できるようにします。日本では複数のVCが入る場合、それぞれの会社と異なる契約書を結ばなければなりませんが、同じ契約書で複数交渉できるように、弁護士に支援してほしい。シリコンバレーの常識では、資金調達はまとめて行い、契約書も1回のシンジケート契約が多いです。

牧野:投資の契約書自体、海外では一般化されています。VCも起業家も弁護士も三者が納得するものを作ります。

森:大阪弁護士会でも、スタンダードを作っていきたいですね。

アレン:大手企業との交渉で、日本のベンチャーはなぜか自分の立場が弱いと思いがちです。値段も条件も、言われたらそのままやらなければと思ってしまう。弁護士と相談して、強気で交渉すべきところ、あきらめてもよいところ、5年後10年後の自分たちの企業価値を考え判断すべきでしょう。場合によっては、取引しないことが良いかもしれないです。

:弁護士の報酬については、弁護士会の報酬規程が廃止され、法律上の問題もあって統一的な価格を打ち出すことは難しいです。シリコンバレーでは、弁護士の業務の対価は、どのような設計が多いでしょうか。

アレン:ネットバブルの絶頂期は、弁護士もストックオプションを対価に動きましたが、バブルがはじけて、今は聞かなくなりました。ただし、時間をおさえてベンチャー支援をする事はあるようです。また、顧問契約を結ぶとき、正規の時間単価と使う時間を明記しつつ、請求自体は資金調達後にするケースは、たまに聞きます。弁護士も、「この会社は、いつか資金調達できるだろう」と契約する、投資家的な決断です。

今後、大阪の弁護士会から、次のベンチャー支援の姿を作ってはどうでしょうか。関西の起業の生態系は始まったところなので、新たな常識を作るチャンスです。世界の常識を作るくらいの気持ちで、一緒にやりましょう。

新しい起業支援の常識を、ここ大阪で作ることができるでしょうか?交流会では、参加者の興味や専門性にもとづき様々な情報交換をし、今後の可能性について語り合いました。

レポート:GVHサポーター会員 マーケティングPRプロデューサー 西山裕子

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